เข้าสู่ระบบあれから数日後、グレンとミーナは旅を続けようやく大国イフリークに到着した。
この世界には東西南北の四つの大国がありここは西の大国で他の4つの国に比べると魔法を主とした文化が発展していた。 「わぁ~!みてグレン!建物があんなにも大きいよ!」 初めて見る都会の建物が珍しいのかミーナのテンションはいつも以上に高かった。 そんなミーナにグレンは呆れた様にため息をついた。 「…さっさとこっちこい。入国の手続きするぞ。」 この国では他国からのテロの防止の為か入国する際に身元と持ち物点検を兼ねた手続きが数カ所ある国の出入り口で行われていた。 もちろん勝手に不法入国すれば国中に警報が鳴り渡りこの国の守護神である魔法騎士団が一斉に出動する事態になり、問答無用で逮捕される。 魔法騎士団の強さは常人を遥かに凌ぐ存在と知っているためかこの国では犯罪件数はほぼ0に近かった。 グレンは入り口まで行くと係りの人に自身のパスポートを出してくださいと言われた。 「おい、お前のパスポートも出せ。この国ではお前の分も必要なんだよ。」 「ちょっ、ちょっと待って…えーっと…」 ミーナは自分の整理整頓されていない鞄をあさりだすが中々パスポートが見つからないためグレンは眉をピクピク震わせていた。 「なんだその汚い鞄は…ったく。すまんが俺のだけでも大丈夫か?急いでるんで。」 グレンは見るに見かねたのか係りの人に自分のだけでいいかたずねた。 「分かりました。今回は特別に1人だけのパスポートのみで入国を許可しましょう。ではこちらをお通り下さい。」 係りの人に案内されるとグレンはそのまま通過するがミーナはまだ鞄の中からパスポートを出そうと探しながら歩いた。 「あーー!!!」 するとミーナは急に大声を出したのでグレンと周りにいる他の人たちは全員こっちを振り返った。 「ど、どうした!?」 「見つかった…」 「え?」 「良かった~!パスポート見つかって。」 どーやらミーナは汚い鞄の中からパスポートを今頃見つけ出して喜んでいた。 グレンとその場にいる人全員はこれを見て同時にこう思った。 「(ややこしいからやめろって。)」 2人は入国を許可されたのでこの国の入り口を通り、大通りに出た。 その通りには普通の町では買えない木の実や魔法に関わる書物、宝石、杖などの店がずらっと並んでいてミーナは目をキラキラさせていた。 そこを歩いてるとグレンは急にミーナに声をかけた。 「お前ここで何かしたいことあるか?」 「私?私は~…とりあえずこの国を見て回りたいかな。」 ミーナは行きたいところが決められないのかニヤニヤしながら悩んでいた。 「そっか。じゃあ俺はこの国のある所に用があるから1人で勝手に回ってくれ。」 「え、じゃあ私もそっちに行くー。」 「ダメだ。別に大した用じゃないがお前が行っても楽しい場所ではない。金はやるからこれで好きなとこ回れ。」 グレンは懐から金貨10枚を出すとそれをミーナに渡し、そのまま瞬間移動で何処かへ行ってしまった。 「全く…グレンは本当に勝手だなぁ。まあ別にいいや。よし、まずはあの店に行ってみよー!」 ミーナは目の前にあった宝石店に吸い込まれるように入った。 「いらっしゃいませ。ごゆっくりどうぞ。」 店に入ると店員の人がペコッと頭を下げてきたのでミーナも同じく頭を下げた。 目の前には台に乗っている数種類の宝石がガラス張りで守られていた。 「わぁ、キレイ!」 ミーナは店の宝石に見とれすぎて知らない間にガラスに頬っぺをベタベタくっつけさせていたため周りのお客に変な目で見られていた。 「あ~、これも欲しいな。でもあれも、これも、それも欲しいし。ああー!もう決められませーん!」 「(うるさすぎるだろあの子。てかあの子周りの事気にしてないだろ?)」 一人で騒いでいるミーナ。どうやら周囲の冷たい目が見えていないようだ。 「あー、でもやっぱ選ぶとするならこの黄色い宝石が入ったネックレスかな?」 「(おぉ、よかったな決まって。)」 ミーナの様子を全部見ていた周囲の人たちはこれで落ち着けると思った。 しかし。 「でも…これ高すぎるー!」 「(何ぃー!!!)」 「何よこれ!金貨23枚なんて払えるわけないじゃない!おかしいでしょー!」 周囲の人たちはもう勘弁してくれよと言わんばかりの呆れ顔になっていた。 迷惑な声が耳障りと思ったのか1人の女性がミーナの所に近づいた。 その女性は金髪に長いワンピースを着た大人の美女だった。 「ちょっとお嬢ちゃん。」 「(おぉ、注意してくれるのか。どこの美人さんか分からないけどありがとうござ…)」 「あなたもこーゆーのが好みなんだね!私もこの宝石大好きなの~!」 その女性はミーナが見ていた宝石が自分の好みと同じだったみたいなので喋りかけたようだ。 「はい!でも、これ高くて買えないんです…」 「いいよ、私が出してあげるから。」 「え、いいんですか!?」 「いいわよ~。お姉さんに任せなさい。」 「ありがとうございます!私昔から黄色が好きだから宝石とか買うときこーゆー黄色系のものにしたかったんです!」 「分かるわその気持ちぃ~!私も髪が金のせいか黄色系が好きで自然と黄色系のアクセサリーとか身につけちゃうのよね~。」 よく見るとそのお姉さんが身につけている指輪やネックレスやイヤリングは全部黄色系に統一されていた。 「わぁ、本当だ!すごく綺麗ですね!」 「でしょー?あなたもこのネックレス絶対似合うと思うわよ?」 2人は初対面とは思えないくらい会話が成立し意気投合していた。 「(………注意じゃないのかーい!てかさっきよりもうるさくなったじゃねーか!)」 その後、ミーナとお姉さんは約3時間程喋り続けた。 2人は欲しい宝石を買うと店から出てミーナは扉の前でお姉さんにお礼を言った。 「本当にありがとうございます!えっと、お名前の方が……」 「いいのよ、気にしなくて。あと私の名前はカレン。よろしくね。」 気づいている人もいると思うがこの女性はエバルフと同じ騎士団にいたあのカレンである。 「カレンさんよろしくです!このネックレス本当にありがとうございます!」 ミーナは買ってもらった黄色い宝石が埋め込まれているネックレスを嬉しそうに眺めた。 「喜んでくれて何よりよ。ミーナはこれからどこ行くつもりなの?」 「私ですか?私はこれからこの国の色んな店を回ろうと思ってるけど場所あんまし分かんなくて…。」 「確かにこの国は広いものね。じゃあ私が案内してあげるわよ?」 「えっ!いいんですか?」 「もちろんよ。それにあなたとはもっと喋りたいしね。」 「私も喋りたいです!行きましょ行きましょ!」 カレンは嬉しそうにはしゃぐミーナを見てクスッと笑い手を引っ張られながらミーナについて行った。 しかし、この何気ない2人の出会いはのちにこの国の大きな戦いの予兆となりそれは世界の歴史に刻まれるこの大事件の幕開けだった。 一方、空間移動でグレンはミーナと別れた後国の一番端にある寂れた通りに移動した。 周りには枯れかけの木々とその間から見える紫色に輝く小さな池とがあり、グレンは黙ってその通りを歩いた。 歩いて行くと少し広めの場所に出てきてそこには古い木造建築の小さな家があった。 その小さな家はまるで何年も人が住んでいないような不気味なオーラが出ていた。 しかし、グレンはそんな事気にしないのか黙ってドアノブを捻って開けた。 ガチャッ 家の中は外と同じ感じの古い造りだがしっかり掃除されいるのかホコリが一切落ちていない。 そしてそこには家の主と思われる中年の男性がグレンに背を向けたまま刀の手入れをしていた。 「……久しぶりだな、グレン。」 背を向けたままの状態でグレンに気づいたのか手入れをしながら言った。 「ここへはもう来ないと思ったがここへ来なければならない理由ができた。それだけだ。」 「フッ、お前はいつまで経っても口が悪いな。っで、その理由とはなんだ?」 「俺があの時会得できなかったあんたの奥義を俺のものにする。理由はそれだけだ、師匠…いや、ミーナの父アガレフ・ヴァミリオン。」 ミーナと聞いて驚いたのか目を大きく開いたアガレフ。手入れをする手を止めてグレンの方を向いた。 「ミーナ…そうか、わかった。お前がその気ならアレを伝授してやろう。ついてこい。」 ミーナと聞いて全てを察したのかその場から立ち上がりグレンを奥の部屋に案内した。 連れてこられたのは魔法書がズラリと並んだ部屋だった。 その部屋の奥には分かりやすいように一本の黒い鞘に収められた長刀と横には魔法書が飾られていた。 「どうだ。俺の白き刀、煌光心(きこうしん)と同等の力を持つ黒き刀。邪光心(じゃこうしん)だ。」 アガレフの言う通り、アガレフの手には白い鞘に収められた長刀が握り締められていた。 「いずれお前がこの刀を欲しがるだろうと予想はしていた。何故ならお前は元々大剣よりも長刀の方が戦闘に向いていたからな。」 そう言ってアガレフは飾ってある邪光心と魔法書を持ってグレンに渡した。 「お前がもう少し成長してから授けようと思ったがその理由が俺の娘となると話は別だ。…こんな親でもたった1人の娘は守ってやりたいと思う気持ちはある。」 グレンは渡された魔法書だけをしまい、邪光心を鞘から引き抜いた。 刀の刃は黒く輝き、まるで悪魔が宿っているようだ。 「確かにいい輝きだ。俺が使ってる大剣よりも斬れ味が良さそうだな。」 そう言って邪光邪を鞘に収めるとグレンはアガレフに対し。 「…前々からひとつ聞きたい事があった。なぜあんたはミーナと母親と共に暮らさない。」 その質問にアガレフは苦い顔をしたが徐々に口を開き正直に言った。 その言葉にさすがのグレンも驚きを隠す事は出来なかった。 西の大国イフリークは国の周りを見えないバリケードで囲んでいて国内で起きた犯罪を感知し犯罪者を逃さないようにするシステムがある。 そのバリケードは高レベルの魔力の壁でできているため力で突破するのは不可能である。 突破するにはバリケードよりも魔力の高い魔法で壊さないとならないがそれを壊すほどの魔力を持つ人間はこの世には数える程度だ。 そう、人間は数える程度。だが悪魔は違う。 今この国にはその悪魔がバリケードを突破しようとしていたのだ。 そこには悪魔界で憤怒の命令を受けてやってきた謎の悪魔。 国の監視にバレないようバリケードがあると思われる位置の前に立っていた。 「…大国イフリーク…この国の警備システムはかなりのものだ。普通の人間になら十分すぎるだろう。」 すると謎の悪魔はバリケードに触れないように手を前に出した。 「このバリケードを壊して進入するのは俺でも危険すぎるな。…どこの誰かは知らんが操らせてもらうぞ。」 手から黒い魔力が発生するとバリケードをかいくぐって国に進入していく。 そしてその魔力は名前も分からない見知らぬ人に取り憑いた。 それを感知したのか謎の悪魔は不気味な笑みを浮かべた。 「さあ、楽しませてもらおうか。この国の地獄に変わっていく姿をな!」ウィリディスが使用する魔法属性は空間。空間属性の神級魔法、[デリート・コネクト]。指定した部分に「シフト」と唱えると四角い透明の立方体が現れ囲う事が出来る上に、必要に応じてその立方体を広げる事が出来る。立方体の範囲を自在に広げて囲み、「デリート」と唱えればその指定された範囲を跡形も無く消す事が出来る。例えるならパソコン画面上の矢印カーソルを目的の場所に合わせて範囲指定し、一気にdeleteキーを押すイメージだ。この「シフト」による範囲指定と「デリート」による削除能力を、ウィリディスは現実世界の空間に存在する物質、生物、そしてあらゆる環境を対象に使用する事が出来る。ウィリディスが最初に竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)の木々を一瞬で消し去ったのもこの力のお陰であった。そして。「シフト」「コネクト」ウィリディスは両手を上空に挙げると巨大な立方体を展開し、「コネクト」と唱えた。その範囲は竜の遺跡を全て覆える程。しかもその上空に展開された立方体の中には最初に消し去った森の木がギッシリと敷き詰められている。そう。この木は「デリート」によって消された森の木の残骸であった。「コネクト」とは接続という意味。ウィリディスは「デリート」で消した範囲の木を「コネクト」する事で上空の立方体内に配置したのだ。そう。[デリート・コネクト]は空間を透過的に選んで削除し接続できる魔法。「シフト」で範囲指定した空間を支配する事が可能。そして上空の立方体の底がパカッと扉の様に開かれる。開き始めた隙間から木がどんどん竜の遺跡がある地上に向かって落ちていく。1本1本が大きく質量のある木。落ちる度に地面の砂埃が舞った。まるで雨の様…いや、そんな生優しいものでは無い。逃げ場を与えない広範囲を覆い尽くした木々による酷(むご)い圧殺方法。そして一度に落ちてきた大量の森の木によって竜の遺跡は飲み込まれてしまった。一方、ウィリディスは空間移動で上空に転移しており、木に押し潰され跡形も無く消え去った竜の遺跡の惨状を見下ろして見ていた。「…やっぱり、こんな程度でグレンは死ぬ訳ないか。」見下ろしながらそう言うウィリディス。どうやらグレンが攻撃を回避してる事に気付いている様だ。「出てきなよ。…決着を付けよう。」「紅の悪魔祓い、グレン。」ウィリディスの言葉と共にグレ
「うわぁぁぁぁぁ!!!ガルムが!…ガルムがあぁ!!!」ティアは胴体が分かれ絶命したガルムの上半身を抱きしめながら叫んだ。靴に血が滲むほど急いで走りドグマ達を呼びに行ったティアは決して遅くなかった。しかし、間に合わなかった。「誰が…こんな事を。俺達竜の民をこんな…こんな…。」ドグマは目の前の惨状を受け入れられずにいた。つい竜の試練洞に行く半日前までは普通の平和な生活を送っていた。昨日は龍神の祭日で民の皆んなが共に飲み食いしながら楽しんだ。ティアとガルムはもうすぐしたら祝言を挙げる予定だった。ーー皆んな今日を生き、明日を楽しみに過ごしていた筈なのに。修行が長引かずここに俺達が居ればこんな事には…。「チクショウ……チクショウ!」ドグマの目からはこの場に居なかった自分に対する悔しさの涙を流していた。「……」グレンは2人と違い、この現状をただ茫然と見ていた。それは彼が他人を想う気持ちが無いからでは無い。ここでの生活を思い出していたからだ。不便な生活であったが、他所者のグレンに優しくしてくれた民達。ドグマが言っていた。ここに住む民達は生活の為にそれぞれ役割を全うしながら助け合って生きていた。それぞれが良い人生、良い流れを築く為に。そんな人達が居るここの生活をグレンは好きになりかけていた。一瞬思っただけであるが、故郷の様な平和なこの竜の遺跡にこれからも住みたい。そう少しだけ思えた。それを、こんな…こんな酷い形で終わらされた。まるであの時のキュアリーハートと同じだ。何の脈絡も無く平和な日々を終わらされた。「…許せねえ。」ポツリと小さく、そして力強い声でグレンは呟いた。ーー竜の民達をこんな風にした奴を、絶対に許さねえ!激しく怒るグレンは心の中でそう叫んだ。「あれ?まだ生き残りが居たんだ。」グレン達が向いてる方向とは反対方面から声が聞こえた。グレンとドグマはその声に反応し、振り返った。漆黒のローブを身に纏った緑髪の男と後方には黒い皮膚をした悪魔が20数体、そして他と比べて身長が低い奴が1人居た。すると漆黒のローブを纏った男がグレンの方を不思議そうに見ていた。「赤い髪…その魔力。…もしかして、グレン?」「何で俺の名前を知ってるんだ?」初対面と思っているグレンは突然面識の無い相手に名前を呼ばれた事に驚いていた。グレ
次の日の明朝4時半。この日もグレンとドグマはいつも通り川で魚を獲りに行った。「(もう慣れてしまったな。)」昨日と同じ様に手掴みで流れる様に魚を獲っていく。そして獲った魚を竜の遺跡へと運び、家に戻ってから朝食を食べた。「今日は龍脈樹には行かん。」グレンは朝食を食べた後、ドグマにそう言われ家を出た。この日、グレンはドグマに連れて来られたのは竜の遺跡から更に奥にある祠(ほこら)だった。その祠の入り口前には巨大な竜の像が建てられており、ドクマはその入り口の前に立ち止まった。「何だ、ここは?」グレンは立ち止まったドグマに質問する。「ここは[竜の試練洞(しれんどう)]。竜の民が龍技を極める為に用意された修行の場だ。竜の試練洞。この祠は竜の遺跡で祀られている龍神が、かつて龍技を極めたいと願う者の為に用意した神聖な修行場。数世代にわたり、伝承されてきた場所である。入り口は森の中にひっそりと隠されてあり、入り口から流れる空気が重い。龍脈樹(りゅうみゃくじゅ)の様に祠の中からまるで生き物の様に魔力が渦巻いているのを感じられた。「ここは龍技を極める為に用意された修行場。グレン、昨日説明した竜挐(りゅうだ)を覚えているな?」「ああ。3つの龍技を同時に使う事で起こる龍技の真髄の最終奥義。昨日、あんたが言ってたよな。」「そうだ。[心眼点睛]、[技之乖離]、[戮力体竜変]。この3つを極めた竜の民が使える奥義だ。この竜の試練洞では竜挐を極める為の修行を行う。」そしてドグマは竜の試練洞へと近づいていき、中へと入っていく。入った瞬間、空気が身体に張り付き乗し掛かる感覚がした。心眼点睛を習得してるグレンには周囲に充満している魔力の流れを目で見る事が出来る。試練洞の中に充満している魔力は、上からグレンに圧を掛ける様な流れ方をしている。まるでこの祠がグレンを試しているかの様だった。「生きてるみたいだろ?だが、試されるのはここからだ。」「ふん、だろうな。これくらいは試練の内には入らねえだろ。」「当たり前だ。こんな事で怖気つく様な奴をここに連れては来ない。」ドグマの発言から、この祠は修行場所であると同時に危険な場所なのだと感じた。その理由をグレンはまだ知らないが、すぐ分かる事になる。昨日までの修行が天国の様だったと。「…よし、もう着くぞ。」前を歩く
「いいか、ヒスイ。お前は竜の民の先導者である俺の後継者だ。これから民達を導いていかなければならない。」「………はい。」これは過去のドグマとヒスイのやり取りだ。ドグマは今の様な髭は無く、30代前半くらいの若々しい姿をしていた。そしてもう1人。娘であるヒスイ。彼女はドグマの言われた事を俯きながら元気のない声で返事をした。「竜の民は大昔の北と東の戦争に巻き込まれ、沢山の民達が命を落とした。このままでは竜の民は滅びてしまう。」「何としてでも、それだけは阻止しなければならない。」そう。竜の民が何故この様な少数民族なのか。それは戦争の被害に遭ったからである。丁度北と東の中間地点にある竜の遺跡は戦場に近く、軍事開発された魔法兵器の巻き添えによって多くの民が命を失った。元々少数であったが、それでも300人は居た竜の民も、年々子供の出生率も減少し今では50人にも満たない程だ。このままでは竜の民は絶えてしまう。ドグマはその焦りを感じていた。ヒスイを立派な先導者に育てあげ、竜の民達をこれからも繁栄させなければ。ドグマはその為、娘をより厳しく育てた。「何度言えば分かる!女だからと言って容赦はしない!」ドグマはまだ10歳前後のヒスイと龍技を使った組み手を行い、ボロボロになってうつ伏せに倒れている彼女を叱責する。またある日は同年代の人と遊ぼうとした時に。「……そうか。お前は先導者の道よりも友達と遊ぶ方が大事だと言うのだな。分かった。もういい…お前には失望した。」勿論本当に失望なんてしていない。ヒスイには先導者としての意志を早くから継いで欲しい。その想いから、時には厳しく突き放す様な言い方をした。自分の思い描く道をヒスイも歩めば、きっと竜の民達はこれからも耐える事なく安泰だ。ーー俺の代で絶えさせたくない!ドグマはこの様にヒスイのやる事1つ1つに口を出していた。しかし、ヒスイが19歳の時だった。突如書き置きだけ残し、娘は家を出てしまった。お父さんへ。私は彼と一緒に外の世界へ行きます。お父さんの理想の娘になれなくてごめんなさい。私は、今まで先導者になりたいと思った事は一度もありませんでした。ずっと黙っててごめんなさい。 ヒスイよりそれを見たドグマはようやく気が付いた。竜の民のこれからの未来を見ていたが、1番
ドグマに言われた通り朝の4時半に起きたグレンは、龍技の真髄の修行をする為にドグマの後ろに付いて歩いていた。早朝に起こされたにも関わらずグレンは眠そうな素振り1つ見せなかった。「初日で眠くはないのか?」「ああ。普段からあまり睡眠を取らない方だ。昨日はゆっくり出来た。」グレンは旅をしてる時もそうであるが、いつ自分の身に危険が起きても対処出来る様に熟睡は基本的にしない。その為、グレンにとっては明朝4時半と早い時間に起こされても睡眠時間的には十分であった。「…そうか。この程度なら生意気な口も普通に叩けるのか。よかろう、遠慮はいらんという事だな。」ドグマは余裕そうなグレンに対し、そう脅しをかける。「(そういえば、昔アガレフに修行を付けてもらう時も同じ様な事を言われたな。)」……思い出すだけでゾッとし、血の気が引いていくのが分かる。あの時は毎日失神するまでボコボコにされていたなぁ。アガレフの修行は本当にキツかった。「よし、着いたぞ。」真っ暗だった為、到着するまでどこを歩いているのか分からなかったが数十分後、ドグマが連れてきた場所は竜の遺跡にある川の上流の方だった。「川で修行するのか?」「そうだな。修行と言えば修行かな。足の裾を捲(まく)れ。今から川で魚を捕まえる。」そしてドグマはズボンの裾を膝上まで捲り上げると片足ずつ川に入っていく。そして川の真ん中辺りまで行くと水面の上で手掴みする様な構えをした。…バシャッ!素早く水面に手を突っ込み一瞬で掬(すく)い上げる。手のひらからはみ出そうな大きさの魚がドグマの手に捉えられ、捉えた魚を竹と藁で編んだ肩掛けの魚籠に入れる。そして再び魚を捕まえる構えに戻った。「…何してる?お前もやらんか。」「あ、ああ。」グレンもドグマと同じ様にズボンを膝上まで捲り上げて川に入ろうと右足を水につける。「うっ!……」あまりの冷たさに声が出てしまうグレン。朝方の気温の低い山奥の川の水。冷たくない訳が無い。「冷たいだろ?因みに魔法は一切使うなよ。修行にならんからな。」「…いや、魔法使わないと見えねえよ。」只でさえ冷た過ぎる水に慣れない中、真っ暗な時間帯で水中の魚が見えない。しかも道具は一切使わず難易度の高い手掴み漁。目を凝らして水面を見るが当然見える訳が無い。グレンは困惑してる中、隣でドグマは流れ
時は遡る事3日前。この日はカイル、エミル、ミーナが東の大国に到着したばかりの日であった。しかし、ここは北の大国と東の大国よりも更に北東部の奥にある場所。そこは一般の人が立ち入ると必ず道に迷うとされる竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)]と呼ばれる森林があった。その森林の中にある地面は深い裂け目や溝が幾筋も走り、獣道や細い道がそれに沿って複雑に分岐している。道はまるで生き物のように折れ曲がり、進んだはずの者を同じ場所へ戻し、方角の感覚を狂わせる。異常な磁場がコンパスの指針も狂わせる為、人の五感や魔力の流れを読めない人が立ち入れば一瞬で迷路へと変わる場所。この森林の中に1人の男が歩いていた。彼の名前は紅の悪魔祓い(デビルブレイカー)グレン。彼はレミールでミーナ達と合流したのだが、そこの国民に国を守る様に提案される。しかし、それを拒否したグレンは国民に危害を加えられた挙句、抵抗すると悪魔と言われて非難された。そしてグレンは自分のせいでミーナに危害が加わると考え、自ら1人になる道を選んだのだ。では何故彼が今この森林に居るのか?(おい、いい加減にしろ!いつまで歩き続けるつもりだ?もうかれこれ3日は歩いてるぞ?)グレンの中に居る悪魔、リフェル。本名強欲のマモンが話し掛ける。グレンはこの竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)に立ち入ってからかれこれ3日は経っていたのだ。「……この森、まるで生きてるみたいに場所が変化してる。ずっと同じところをグルグル回らされているみたいだ。」木々に囲まれて複雑に分岐した細い道を辿っていくも、いつの間にか元来た道に戻っている。更に元来た道をよく確認すると木々の形や生え方、地面の裂け目の形が少し違っていた。(何回この道来るんだよ!もう100回くらいこの光景見てるぞ!)「……いや、違う。よく見てみろ。この地面と木の並び方。少し違って見えないか?」(は?そんなもん覚えてる訳ないだろ!)「最初来た時はこの地面の裂け目は3本だった。だが今は2本。木も1本1本捻れてたのが真っ直ぐになってる。」(…長い事同じ光景を見て疲れてんのか?…いや、待てよ…グレン、何が言いたい?)何かに気付いたリフェルはグレンの考えを聞く事にした。「多分だが俺達が前に進めば進む程、木や道の形が変化して最初来た時と同じ光景を見せられる。けど、地面







