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第6話 西の大国イフリーク

last update Last Updated: 2025-12-16 23:03:27

あれから数日後、グレンとミーナは旅を続けようやく大国イフリークに到着した。

この世界には東西南北の四つの大国がありここは西の大国で他の4つの国に比べると魔法を主とした文化が発展していた。

「わぁ~!みてグレン!建物があんなにも大きいよ!」

初めて見る都会の建物が珍しいのかミーナのテンションはいつも以上に高かった。

そんなミーナにグレンは呆れた様にため息をついた。

「…さっさとこっちこい。入国の手続きするぞ。」

この国では他国からのテロの防止の為か入国する際に身元と持ち物点検を兼ねた手続きが数カ所ある国の出入り口で行われていた。

もちろん勝手に不法入国すれば国中に警報が鳴り渡りこの国の守護神である魔法騎士団が一斉に出動する事態になり、問答無用で逮捕される。

魔法騎士団の強さは常人を遥かに凌ぐ存在と知っているためかこの国では犯罪件数はほぼ0に近かった。

グレンは入り口まで行くと係りの人に自身のパスポートを出してくださいと言われた。

「おい、お前のパスポートも出せ。この国ではお前の分も必要なんだよ。」

「ちょっ、ちょっと待って…えーっと…」

ミーナは自分の整理整頓されていない鞄をあさりだすが中々パスポートが見つからないためグレンは眉をピクピク震わせていた。

「なんだその汚い鞄は…ったく。すまんが俺のだけでも大丈夫か?急いでるんで。」

グレンは見るに見かねたのか係りの人に自分のだけでいいかたずねた。

「分かりました。今回は特別に1人だけのパスポートのみで入国を許可しましょう。ではこちらをお通り下さい。」

係りの人に案内されるとグレンはそのまま通過するがミーナはまだ鞄の中からパスポートを出そうと探しながら歩いた。

「あーー!!!」

するとミーナは急に大声を出したのでグレンと周りにいる他の人たちは全員こっちを振り返った。

「ど、どうした!?」

「見つかった…」

「え?」

「良かった~!パスポート見つかって。」

どーやらミーナは汚い鞄の中からパスポートを今頃見つけ出して喜んでいた。

グレンとその場にいる人全員はこれを見て同時にこう思った。

「(ややこしいからやめろって。)」

2人は入国を許可されたのでこの国の入り口を通り、大通りに出た。

その通りには普通の町では買えない木の実や魔法に関わる書物、宝石、杖などの店がずらっと並んでいてミーナは目をキラキラさせていた。

そこを歩いてるとグレンは急にミーナに声をかけた。

「お前ここで何かしたいことあるか?」

「私?私は~…とりあえずこの国を見て回りたいかな。」

ミーナは行きたいところが決められないのかニヤニヤしながら悩んでいた。

「そっか。じゃあ俺はこの国のある所に用があるから1人で勝手に回ってくれ。」

「え、じゃあ私もそっちに行くー。」

「ダメだ。別に大した用じゃないがお前が行っても楽しい場所ではない。金はやるからこれで好きなとこ回れ。」

グレンは懐から金貨10枚を出すとそれをミーナに渡し、そのまま瞬間移動で何処かへ行ってしまった。

「全く…グレンは本当に勝手だなぁ。まあ別にいいや。よし、まずはあの店に行ってみよー!」

ミーナは目の前にあった宝石店に吸い込まれるように入った。

「いらっしゃいませ。ごゆっくりどうぞ。」

店に入ると店員の人がペコッと頭を下げてきたのでミーナも同じく頭を下げた。

目の前には台に乗っている数種類の宝石がガラス張りで守られていた。

「わぁ、キレイ!」

ミーナは店の宝石に見とれすぎて知らない間にガラスに頬っぺをベタベタくっつけさせていたため周りのお客に変な目で見られていた。

「あ~、これも欲しいな。でもあれも、これも、それも欲しいし。ああー!もう決められませーん!」

「(うるさすぎるだろあの子。てかあの子周りの事気にしてないだろ?)」

一人で騒いでいるミーナ。どうやら周囲の冷たい目が見えていないようだ。

「あー、でもやっぱ選ぶとするならこの黄色い宝石が入ったネックレスかな?」

「(おぉ、よかったな決まって。)」

ミーナの様子を全部見ていた周囲の人たちはこれで落ち着けると思った。

しかし。

「でも…これ高すぎるー!」

「(何ぃー!!!)」

「何よこれ!金貨23枚なんて払えるわけないじゃない!おかしいでしょー!」

周囲の人たちはもう勘弁してくれよと言わんばかりの呆れ顔になっていた。

迷惑な声が耳障りと思ったのか1人の女性がミーナの所に近づいた。

その女性は金髪に長いワンピースを着た大人の美女だった。

「ちょっとお嬢ちゃん。」

「(おぉ、注意してくれるのか。どこの美人さんか分からないけどありがとうござ…)」

「あなたもこーゆーのが好みなんだね!私もこの宝石大好きなの~!」

その女性はミーナが見ていた宝石が自分の好みと同じだったみたいなので喋りかけたようだ。

「はい!でも、これ高くて買えないんです…」

「いいよ、私が出してあげるから。」

「え、いいんですか!?」

「いいわよ~。お姉さんに任せなさい。」

「ありがとうございます!私昔から黄色が好きだから宝石とか買うときこーゆー黄色系のものにしたかったんです!」

「分かるわその気持ちぃ~!私も髪が金のせいか黄色系が好きで自然と黄色系のアクセサリーとか身につけちゃうのよね~。」

よく見るとそのお姉さんが身につけている指輪やネックレスやイヤリングは全部黄色系に統一されていた。

「わぁ、本当だ!すごく綺麗ですね!」

「でしょー?あなたもこのネックレス絶対似合うと思うわよ?」

2人は初対面とは思えないくらい会話が成立し意気投合していた。

「(………注意じゃないのかーい!てかさっきよりもうるさくなったじゃねーか!)」

その後、ミーナとお姉さんは約3時間程喋り続けた。

2人は欲しい宝石を買うと店から出てミーナは扉の前でお姉さんにお礼を言った。

「本当にありがとうございます!えっと、お名前の方が……」

「いいのよ、気にしなくて。あと私の名前はカレン。よろしくね。」

気づいている人もいると思うがこの女性はエバルフと同じ騎士団にいたあのカレンである。

「カレンさんよろしくです!このネックレス本当にありがとうございます!」

ミーナは買ってもらった黄色い宝石が埋め込まれているネックレスを嬉しそうに眺めた。

「喜んでくれて何よりよ。ミーナはこれからどこ行くつもりなの?」

「私ですか?私はこれからこの国の色んな店を回ろうと思ってるけど場所あんまし分かんなくて…。」

「確かにこの国は広いものね。じゃあ私が案内してあげるわよ?」

「えっ!いいんですか?」

「もちろんよ。それにあなたとはもっと喋りたいしね。」

「私も喋りたいです!行きましょ行きましょ!」

カレンは嬉しそうにはしゃぐミーナを見てクスッと笑い手を引っ張られながらミーナについて行った。

しかし、この何気ない2人の出会いはのちにこの国の大きな戦いの予兆となりそれは世界の歴史に刻まれるこの大事件の幕開けだった。

一方、空間移動でグレンはミーナと別れた後国の一番端にある寂れた通りに移動した。

周りには枯れかけの木々とその間から見える紫色に輝く小さな池とがあり、グレンは黙ってその通りを歩いた。

歩いて行くと少し広めの場所に出てきてそこには古い木造建築の小さな家があった。

その小さな家はまるで何年も人が住んでいないような不気味なオーラが出ていた。

しかし、グレンはそんな事気にしないのか黙ってドアノブを捻って開けた。

ガチャッ

家の中は外と同じ感じの古い造りだがしっかり掃除されいるのかホコリが一切落ちていない。

そしてそこには家の主と思われる中年の男性がグレンに背を向けたまま刀の手入れをしていた。

「……久しぶりだな、グレン。」

背を向けたままの状態でグレンに気づいたのか手入れをしながら言った。

「ここへはもう来ないと思ったがここへ来なければならない理由ができた。それだけだ。」

「フッ、お前はいつまで経っても口が悪いな。っで、その理由とはなんだ?」

「俺があの時会得できなかったあんたの奥義を俺のものにする。理由はそれだけだ、師匠…いや、ミーナの父アガレフ・ヴァミリオン。」

ミーナと聞いて驚いたのか目を大きく開いたアガレフ。手入れをする手を止めてグレンの方を向いた。

「ミーナ…そうか、わかった。お前がその気ならアレを伝授してやろう。ついてこい。」

ミーナと聞いて全てを察したのかその場から立ち上がりグレンを奥の部屋に案内した。

連れてこられたのは魔法書がズラリと並んだ部屋だった。

その部屋の奥には分かりやすいように一本の黒い鞘に収められた長刀と横には魔法書が飾られていた。

「どうだ。俺の白き刀、煌光心(きこうしん)と同等の力を持つ黒き刀。邪光心(じゃこうしん)だ。」

アガレフの言う通り、アガレフの手には白い鞘に収められた長刀が握り締められていた。

「いずれお前がこの刀を欲しがるだろうと予想はしていた。何故ならお前は元々大剣よりも長刀の方が戦闘に向いていたからな。」

そう言ってアガレフは飾ってある邪光心と魔法書を持ってグレンに渡した。

「お前がもう少し成長してから授けようと思ったがその理由が俺の娘となると話は別だ。…こんな親でもたった1人の娘は守ってやりたいと思う気持ちはある。」

グレンは渡された魔法書だけをしまい、邪光心を鞘から引き抜いた。

刀の刃は黒く輝き、まるで悪魔が宿っているようだ。

「確かにいい輝きだ。俺が使ってる大剣よりも斬れ味が良さそうだな。」

そう言って邪光邪を鞘に収めるとグレンはアガレフに対し。

「…前々からひとつ聞きたい事があった。なぜあんたはミーナと母親と共に暮らさない。」

その質問にアガレフは苦い顔をしたが徐々に口を開き正直に言った。

その言葉にさすがのグレンも驚きを隠す事は出来なかった。

西の大国イフリークは国の周りを見えないバリケードで囲んでいて国内で起きた犯罪を感知し犯罪者を逃さないようにするシステムがある。

そのバリケードは高レベルの魔力の壁でできているため力で突破するのは不可能である。

突破するにはバリケードよりも魔力の高い魔法で壊さないとならないがそれを壊すほどの魔力を持つ人間はこの世には数える程度だ。

そう、人間は数える程度。だが悪魔は違う。

今この国にはその悪魔がバリケードを突破しようとしていたのだ。

そこには悪魔界で憤怒の命令を受けてやってきた謎の悪魔。

国の監視にバレないようバリケードがあると思われる位置の前に立っていた。

「…大国イフリーク…この国の警備システムはかなりのものだ。普通の人間になら十分すぎるだろう。」

すると謎の悪魔はバリケードに触れないように手を前に出した。

「このバリケードを壊して進入するのは俺でも危険すぎるな。…どこの誰かは知らんが操らせてもらうぞ。」

手から黒い魔力が発生するとバリケードをかいくぐって国に進入していく。

そしてその魔力は名前も分からない見知らぬ人に取り憑いた。

それを感知したのか謎の悪魔は不気味な笑みを浮かべた。

「さあ、楽しませてもらおうか。この国の地獄に変わっていく姿をな!」

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