登入あれから数日後、グレンとミーナは旅を続けようやく大国イフリークに到着した。
この世界には東西南北の四つの大国がありここは西の大国で他の4つの国に比べると魔法を主とした文化が発展していた。 「わぁ~!みてグレン!建物があんなにも大きいよ!」 初めて見る都会の建物が珍しいのかミーナのテンションはいつも以上に高かった。 そんなミーナにグレンは呆れた様にため息をついた。 「…さっさとこっちこい。入国の手続きするぞ。」 この国では他国からのテロの防止の為か入国する際に身元と持ち物点検を兼ねた手続きが数カ所ある国の出入り口で行われていた。 もちろん勝手に不法入国すれば国中に警報が鳴り渡りこの国の守護神である魔法騎士団が一斉に出動する事態になり、問答無用で逮捕される。 魔法騎士団の強さは常人を遥かに凌ぐ存在と知っているためかこの国では犯罪件数はほぼ0に近かった。 グレンは入り口まで行くと係りの人に自身のパスポートを出してくださいと言われた。 「おい、お前のパスポートも出せ。この国ではお前の分も必要なんだよ。」 「ちょっ、ちょっと待って…えーっと…」 ミーナは自分の整理整頓されていない鞄をあさりだすが中々パスポートが見つからないためグレンは眉をピクピク震わせていた。 「なんだその汚い鞄は…ったく。すまんが俺のだけでも大丈夫か?急いでるんで。」 グレンは見るに見かねたのか係りの人に自分のだけでいいかたずねた。 「分かりました。今回は特別に1人だけのパスポートのみで入国を許可しましょう。ではこちらをお通り下さい。」 係りの人に案内されるとグレンはそのまま通過するがミーナはまだ鞄の中からパスポートを出そうと探しながら歩いた。 「あーー!!!」 するとミーナは急に大声を出したのでグレンと周りにいる他の人たちは全員こっちを振り返った。 「ど、どうした!?」 「見つかった…」 「え?」 「良かった~!パスポート見つかって。」 どーやらミーナは汚い鞄の中からパスポートを今頃見つけ出して喜んでいた。 グレンとその場にいる人全員はこれを見て同時にこう思った。 「(ややこしいからやめろって。)」 2人は入国を許可されたのでこの国の入り口を通り、大通りに出た。 その通りには普通の町では買えない木の実や魔法に関わる書物、宝石、杖などの店がずらっと並んでいてミーナは目をキラキラさせていた。 そこを歩いてるとグレンは急にミーナに声をかけた。 「お前ここで何かしたいことあるか?」 「私?私は~…とりあえずこの国を見て回りたいかな。」 ミーナは行きたいところが決められないのかニヤニヤしながら悩んでいた。 「そっか。じゃあ俺はこの国のある所に用があるから1人で勝手に回ってくれ。」 「え、じゃあ私もそっちに行くー。」 「ダメだ。別に大した用じゃないがお前が行っても楽しい場所ではない。金はやるからこれで好きなとこ回れ。」 グレンは懐から金貨10枚を出すとそれをミーナに渡し、そのまま瞬間移動で何処かへ行ってしまった。 「全く…グレンは本当に勝手だなぁ。まあ別にいいや。よし、まずはあの店に行ってみよー!」 ミーナは目の前にあった宝石店に吸い込まれるように入った。 「いらっしゃいませ。ごゆっくりどうぞ。」 店に入ると店員の人がペコッと頭を下げてきたのでミーナも同じく頭を下げた。 目の前には台に乗っている数種類の宝石がガラス張りで守られていた。 「わぁ、キレイ!」 ミーナは店の宝石に見とれすぎて知らない間にガラスに頬っぺをベタベタくっつけさせていたため周りのお客に変な目で見られていた。 「あ~、これも欲しいな。でもあれも、これも、それも欲しいし。ああー!もう決められませーん!」 「(うるさすぎるだろあの子。てかあの子周りの事気にしてないだろ?)」 一人で騒いでいるミーナ。どうやら周囲の冷たい目が見えていないようだ。 「あー、でもやっぱ選ぶとするならこの黄色い宝石が入ったネックレスかな?」 「(おぉ、よかったな決まって。)」 ミーナの様子を全部見ていた周囲の人たちはこれで落ち着けると思った。 しかし。 「でも…これ高すぎるー!」 「(何ぃー!!!)」 「何よこれ!金貨23枚なんて払えるわけないじゃない!おかしいでしょー!」 周囲の人たちはもう勘弁してくれよと言わんばかりの呆れ顔になっていた。 迷惑な声が耳障りと思ったのか1人の女性がミーナの所に近づいた。 その女性は金髪に長いワンピースを着た大人の美女だった。 「ちょっとお嬢ちゃん。」 「(おぉ、注意してくれるのか。どこの美人さんか分からないけどありがとうござ…)」 「あなたもこーゆーのが好みなんだね!私もこの宝石大好きなの~!」 その女性はミーナが見ていた宝石が自分の好みと同じだったみたいなので喋りかけたようだ。 「はい!でも、これ高くて買えないんです…」 「いいよ、私が出してあげるから。」 「え、いいんですか!?」 「いいわよ~。お姉さんに任せなさい。」 「ありがとうございます!私昔から黄色が好きだから宝石とか買うときこーゆー黄色系のものにしたかったんです!」 「分かるわその気持ちぃ~!私も髪が金のせいか黄色系が好きで自然と黄色系のアクセサリーとか身につけちゃうのよね~。」 よく見るとそのお姉さんが身につけている指輪やネックレスやイヤリングは全部黄色系に統一されていた。 「わぁ、本当だ!すごく綺麗ですね!」 「でしょー?あなたもこのネックレス絶対似合うと思うわよ?」 2人は初対面とは思えないくらい会話が成立し意気投合していた。 「(………注意じゃないのかーい!てかさっきよりもうるさくなったじゃねーか!)」 その後、ミーナとお姉さんは約3時間程喋り続けた。 2人は欲しい宝石を買うと店から出てミーナは扉の前でお姉さんにお礼を言った。 「本当にありがとうございます!えっと、お名前の方が……」 「いいのよ、気にしなくて。あと私の名前はカレン。よろしくね。」 気づいている人もいると思うがこの女性はエバルフと同じ騎士団にいたあのカレンである。 「カレンさんよろしくです!このネックレス本当にありがとうございます!」 ミーナは買ってもらった黄色い宝石が埋め込まれているネックレスを嬉しそうに眺めた。 「喜んでくれて何よりよ。ミーナはこれからどこ行くつもりなの?」 「私ですか?私はこれからこの国の色んな店を回ろうと思ってるけど場所あんまし分かんなくて…。」 「確かにこの国は広いものね。じゃあ私が案内してあげるわよ?」 「えっ!いいんですか?」 「もちろんよ。それにあなたとはもっと喋りたいしね。」 「私も喋りたいです!行きましょ行きましょ!」 カレンは嬉しそうにはしゃぐミーナを見てクスッと笑い手を引っ張られながらミーナについて行った。 しかし、この何気ない2人の出会いはのちにこの国の大きな戦いの予兆となりそれは世界の歴史に刻まれるこの大事件の幕開けだった。 一方、空間移動でグレンはミーナと別れた後国の一番端にある寂れた通りに移動した。 周りには枯れかけの木々とその間から見える紫色に輝く小さな池とがあり、グレンは黙ってその通りを歩いた。 歩いて行くと少し広めの場所に出てきてそこには古い木造建築の小さな家があった。 その小さな家はまるで何年も人が住んでいないような不気味なオーラが出ていた。 しかし、グレンはそんな事気にしないのか黙ってドアノブを捻って開けた。 ガチャッ 家の中は外と同じ感じの古い造りだがしっかり掃除されいるのかホコリが一切落ちていない。 そしてそこには家の主と思われる中年の男性がグレンに背を向けたまま刀の手入れをしていた。 「……久しぶりだな、グレン。」 背を向けたままの状態でグレンに気づいたのか手入れをしながら言った。 「ここへはもう来ないと思ったがここへ来なければならない理由ができた。それだけだ。」 「フッ、お前はいつまで経っても口が悪いな。っで、その理由とはなんだ?」 「俺があの時会得できなかったあんたの奥義を俺のものにする。理由はそれだけだ、師匠…いや、ミーナの父アガレフ・ヴァミリオン。」 ミーナと聞いて驚いたのか目を大きく開いたアガレフ。手入れをする手を止めてグレンの方を向いた。 「ミーナ…そうか、わかった。お前がその気ならアレを伝授してやろう。ついてこい。」 ミーナと聞いて全てを察したのかその場から立ち上がりグレンを奥の部屋に案内した。 連れてこられたのは魔法書がズラリと並んだ部屋だった。 その部屋の奥には分かりやすいように一本の黒い鞘に収められた長刀と横には魔法書が飾られていた。 「どうだ。俺の白き刀、煌光心(きこうしん)と同等の力を持つ黒き刀。邪光心(じゃこうしん)だ。」 アガレフの言う通り、アガレフの手には白い鞘に収められた長刀が握り締められていた。 「いずれお前がこの刀を欲しがるだろうと予想はしていた。何故ならお前は元々大剣よりも長刀の方が戦闘に向いていたからな。」 そう言ってアガレフは飾ってある邪光心と魔法書を持ってグレンに渡した。 「お前がもう少し成長してから授けようと思ったがその理由が俺の娘となると話は別だ。…こんな親でもたった1人の娘は守ってやりたいと思う気持ちはある。」 グレンは渡された魔法書だけをしまい、邪光心を鞘から引き抜いた。 刀の刃は黒く輝き、まるで悪魔が宿っているようだ。 「確かにいい輝きだ。俺が使ってる大剣よりも斬れ味が良さそうだな。」 そう言って邪光邪を鞘に収めるとグレンはアガレフに対し。 「…前々からひとつ聞きたい事があった。なぜあんたはミーナと母親と共に暮らさない。」 その質問にアガレフは苦い顔をしたが徐々に口を開き正直に言った。 その言葉にさすがのグレンも驚きを隠す事は出来なかった。 西の大国イフリークは国の周りを見えないバリケードで囲んでいて国内で起きた犯罪を感知し犯罪者を逃さないようにするシステムがある。 そのバリケードは高レベルの魔力の壁でできているため力で突破するのは不可能である。 突破するにはバリケードよりも魔力の高い魔法で壊さないとならないがそれを壊すほどの魔力を持つ人間はこの世には数える程度だ。 そう、人間は数える程度。だが悪魔は違う。 今この国にはその悪魔がバリケードを突破しようとしていたのだ。 そこには悪魔界で憤怒の命令を受けてやってきた謎の悪魔。 国の監視にバレないようバリケードがあると思われる位置の前に立っていた。 「…大国イフリーク…この国の警備システムはかなりのものだ。普通の人間になら十分すぎるだろう。」 すると謎の悪魔はバリケードに触れないように手を前に出した。 「このバリケードを壊して進入するのは俺でも危険すぎるな。…どこの誰かは知らんが操らせてもらうぞ。」 手から黒い魔力が発生するとバリケードをかいくぐって国に進入していく。 そしてその魔力は名前も分からない見知らぬ人に取り憑いた。 それを感知したのか謎の悪魔は不気味な笑みを浮かべた。 「さあ、楽しませてもらおうか。この国の地獄に変わっていく姿をな!」ライクとニケルは城の裏側にある人気の無い場所へと移動した。 後ろから尾行していたロゼアは壁に隠れながら、ライクとニケルが話をしているのを覗き込んでいた。 …側から見れば只のストーカーにしか見えない。 壁の向こうではライクから先に声を掛けていた。 「で?どうしたんだよ。さっきも、お前一言も喋らなかったし。」 先程の会話でも、ニケルは浮かない顔をしながらグレンやグロードの話を聞いていた。 その理由は。 「…僕達とグロードさんの関係って、これからどうなるのかなと思って。」 「グロードとの関係?」 何を言ってるのか分からないライクだが、ニケルはそのまま説明を続けた。 「大恩あるグロードさんの事を、僕はずっと亡くした父親の様に思ってた。本当の父親じゃ無い事は分かってる。だけど、まるで親子みたいな今の関係性が僕は好きだったんだ。」 「けど、生き別れた本当の息子であるグレンが戻って来たら、もうそんな関係には戻れないのかなって…。」 ニケルの悩み。それは本当の息子であるグレンが戻ってきた以上、自分達はグロードの息子の代わりにはなれないという事である。 また今までの関係性も変わってしまい、もうグロードに相手にされないのでは無いかという不安もあった。 「勿論、グレンと再会出来た事は僕も嬉しいけど。…やっぱり良いな。本当の親が生きてるのって。」 月の民殲滅戦で両親を亡くしてるライクとニケル。特にニケルは子供の頃は甘えん坊であった為、親への未練はライクよりも強い。 親の居ない2人にとってグロードは父親同然。しかし、本当の父親になる事は出来ない。 そう思うとニケルは、少し寂しく感じていた。 それに対してライクは。 「ニケル…お前の言う様に、あいつは俺達の父親じゃねえし、俺達があいつの息子代わりになる事も出来ねえ。」 「……」 「でもよぉ、俺達とグロードとの関係性は何も変わらないと思うぜ。」 「…え?」 落ち込み俯いてたニケルはライクの顔を見た。 「俺もあいつの事は父親みたいに思ってたけど、どっちかと言えば師匠に近い感じだな。それに、あいつは面倒見が良くて、いつも丁寧に俺達の修行に付き合ってくれた。」 「優しい奴だからさ、例え息子が居ようと俺達との師弟関係まで変わる事はねえよ。」 「ライク…
魔導兵器ラウスを倒した事と、北の軍事兵器もグロードが破壊した事により、北の大国が今後攻撃してくる事は無いだろう。北の大国は多くの軍人と軍事兵器を失った事により、いずれ国の財政が崩れ破綻に追い込まれる事となる。戦う力を失った北の大国ウンディーネは結果的に敗戦国となり、これにより東北魔導大戦は事実上終結する事になる。しかし東の大国も無傷という訳にはいかず、今回の魔導兵器ラウスとの戦闘によって沢山の死傷者が出ていた。それだけではない。東の大国の主戦力が戦っている間、手薄になった城内にて更なる事件が起こってしまう。ノーム王の暗殺。戦いが終わった後、城内へ行くとそこは戦場と同じくらい凄惨な状況となっていた。医療班の人も殆どが殺されており、警備の者達に関しては、肉体が残っていれば運が良かったと思えるくらいバラバラに殺されていた。一体誰が実行したのかは不明。しかし、こんな事をするのは1人しか居ないとグロードは気付いていた。「…ベリエル!」見たところ胸部を刺殺(しさつ)されて殺されている様に見えるが、医療知識が豊富なグロードはノーム王の身体を少し触れただけで他の殺害方法で殺されたのだと判断する。「…内臓が全て潰されている。まるで身体の中をかき混ぜられたかの様に……許せない。」あまりにも残酷な殺し方をされている為、グロードは沸々と怒りを覚えた。この場には他にグレン、ミーナ、エミル、ライク、ニケル、フィナ、ネル、そして八握剣(やつかのつるぎ)のギンジが居た。カイルとロゼアとアルバスは意識を取り戻したが、戦いで受けたダメージが大きく、今は休んでいる。他の八握剣(やつかのつるぎ)も同様に、命に別状は無いが大掛かりな治療が必要な状態である為、カイル達同様にこの場には居なかった。ノーム王が殺されている姿を見て先に悲しんだのは、当然八握剣(やつかのつるぎ)のリーダーであるギンジであった。「ノーム王…くっ…何で、こんな事に!」ギンジは両手を握りしめ、悔しさと悲しみで顔を横に向きながら涙を流していた。王の懐刀である八握剣。そのリーダーともあろう者が他のメンバーを救えず、更には王の命さえも守る事が出来ず、ノコノコと生き残ってしまった。ーー俺のせいで…役立たずにも程がある!しかし、それに対してミーナが。「ギンジさん。自分のせいだなんて思わないで下さい。皆んな
そして更に4年後。ラウスは18歳になり、ルーファスは9歳となる。ラウスは高校3年の学年となり、全ての成績において優秀な成績を収めていた。幼い頃から教えられた事は殆ど完璧にこなすその姿を見て、いつしかラウスは神童と呼ばれ将来を期待される様になる。しかし、ラウスは魔法を仕事にする道は選ばずそのまま農作業を営み続ける道を選んだ。当然教師はラウスを説得するもキッパリと断った。自分の将来の夢よりも、ルーファスの側にずっと居る事の方が大事だったからである。こうして学生の頃はそれなりに有名だったラウスは、突如として公の場から姿を消したのだ。一方、ルーファスもラウス同様に成績が良かった。ラウスが合間を縫って勉強を教えているのもあるが、どうやらルーファスも少し教えればすぐ覚える事が出来るのだろう。「(流石は俺の弟だな。)」勉強を見ていたラウスは心の中でルーファスを誉めていた。ある日、ルーファスはこの家に元々住んでいた老夫婦の写真が飾ってある仏壇を見て質問してきた。「兄さん。この人達って、僕達とはどういう関係なの?」あの頃、まだ赤ん坊だったルーファスはこの家に元々住んでいた老夫婦の存在を知らない。「この人達はね、俺達の親みたいな人だよ。本当の親じゃ無いけど、親のいない俺達の面倒を見てくれた人だ。」亡くなった老夫婦の事をラウスは自分の親だと思っており、ラウスにとっては生きていく術を教えてくれた恩師でもあった。「そーなんだ。…じゃあ、僕達の本当のお父さんとお母さんは?」1番聞かれたく無い質問をルーファスは悪気なく聞いてくる。当然である。ルーファスは親の事を何も知らない為、本当の親が気になるのは当然の事。…そっか、あの時お婆ちゃんはこんな気持ちだったんだ。そりゃ、言いたく無いよね。ラウスはルーファスに聞かれた事により、あの時のお婆ちゃんの気持ちが少し分かった。あの時から親の事はあまり思い出さない様に生きてきたラウス。正直、あまり親の事を聞かれても何て言ったら良いのか分からなかった。只、ラウス自身が抱いてる気持ちとして言った。「…ロクでも無い人達だよ。父親は俺と母親を置いて出て行き、残された母親も親の責任を放棄して出て行った。」まだ子供に言うべき事では無いのだろうが、ついつい自分の感情任せに言ってしまったラウス。「そうなんだ。…でも僕、少し会
お母さん…何で帰って来ないんだよぉ…。俺1人でどうしたら良いの?どれだけ待っても帰って来ない母親のヒスイ。既に半日以上待っていたのだが帰って来る気配が無い。ラウス自身、半日以上何も食べていない為、空腹が限界を通り越していた。「おぎゃー!!」泣き叫ぶ弟のルーファス。生後3ヶ月の赤ん坊。お腹も空くし、オムツもしてるから替えてあげないといけない。その他にも、身体を清潔にしないといけない。…どうすれば…。ラウスは寝室で泣いているルーファスの所へ行き、様子を見た。「おぎゃー!おぎゃー!」「凄く泣いてる…こんな時、お母さんどうしてたっけ?」ラウスは普段、母親がどうやってルーファスの世話をしていたのか思い出していた。そしてヒスイが何をしていたのか思い出したラウス。「…まずは、オムツかご飯か。どっちかだけど…嫌だなぁ、オムツの匂いを嗅ぐのは…」それでも我慢してオムツの匂いを嗅ぐラウス。「…多分こっちじゃ無いか。じゃあミルク作らないと。」ラウスは台所にルーファス用のミルクが保管されている所を覚えていた為、そこに行ってミルク粉と哺乳瓶を取り出す。「えっと…先にお湯を温めるんだっけ?」初めての事でどうすれば良いか分からないラウス。しかし、取り扱い説明書があったので、それを見ながら何とか作って哺乳瓶に入れる事が出来た。「よし!後は水で冷まして…よし!」人肌まで冷まし、ラウスはそれをルーファスに飲ませる為、ベッドから起こした。「おーよしよし!ミルクだよ〜。」ヒスイが言ってた様に真似しながら、ルーファスにミルクを飲ませてあげるラウス。ルーファスは勢いよくミルクを飲んでおり、よっぽどお腹が空いていたのが見て分かる。半日、何も食べなければ大人でもお腹が空くに決まってる。「俺も何か食べないと…。」そう言ってラウスは戸棚にある非常食を取り出し、空腹を埋める為にそれらをお腹に詰め込んだ。見たところ、非常食やミルクの量から数日は持つだろうと判断した。しかし、この食料が無くなったらどうしようかと。ラウスはそれが恐怖で堪らなかった。「どうすれば…後、お金だけど。お母さんの貯金でどれだけ過ごせるのか…。」勝手にお金を使う事に抵抗感があるも、生きる為には仕方ないとヒスイが管理してる通帳を確認する。子供では見た事の無い数字に驚くラウスであったが、実際の
真っ暗な暗闇の中。1人の女性が下を向きながら何かを覗き込んで泣いていた。「…ラウス……ルーファス……どうして、こんな事に…。」その女性はヒスイであった。ここは死後の世界であり、この暗闇の空間は死後の世界へ行く前の道。死後の狭間である。ヒスイは死後の世界へは行かず、死後の狭間にある暗闇の空間で家族を見守りながら待ち続けていたのだ。そして現世を見ながら自身の息子達が戦う姿を見て涙を流していた。すると後ろから。「…2人が戦っているのか?」その声の主はヒスイの父親であり、グレンに龍技の真髄を教えた竜の民のドグマであった。後ろからドグマに言われたヒスイは、涙を流しながら振り返る。「…お父さん。」「ヒスイ。…お前も辛いのは分かるが、今の俺達には見守る事しか出来ない。」そしてヒスイの隣に座り、現世で戦うグレン(ルーファス)とラウス。2人の戦いを覗き込む。「信じるしか無い。グレン…いや、ルーファスの事を。そして、あいつの強さを。…きっとあいつが兄を救ってくれる筈だ。」ヒスイはグレン(ルーファス)が生後3ヶ月の時にこの世を去った。ドグマもヒスイが家を出てから、自分に孫が居る事も知らずに30年間虚しく過ごしてきた。しかし、その孫であるグレン(ルーファス)は偶然にもヒスイの父であるドグマと出会い、龍技の真髄を教えてくれた。運命が知らない内に引き合わせてくれたのだ。そして今、ドグマに教えられた龍技の真髄によりグレンは、魔導兵器となり殺戮の呪縛に囚われた兄ラウスを救う為に戦っている。自分の弟子であり、孫でもあるグレンをドグマは信じていた。「(グレン。お前の生き様を、今こそ見せてくれ。)」ドグマの墓前で言ったグレンの誓いに対し、心の中で返答した。信じる事しか出来ないヒスイとドグマは、ラウスとルーファスの行く末が少しでも救われる様に、両手を合わせて祈る。あの世でヒスイとドグマが見守る中、現世ではグレンとラウスの死闘が繰り広げられている。戮力体竜変(りくりょくたいりゅうへん)によって竜人化したグレンは先程とは違い、身体機能が大幅に強化される。自然魔力を体内に取り込む戮力体竜変。それにより身体に現れた竜の鱗は鋼をも上回る強度を誇る。その拳でラウスの胸部を殴る。バコォォォン!!!グレンの拳により、ラウスの硬い胸部は拳大の大きさに凹んだ。グレ
ミーナ達はネルの空間移動でカイルやエミルの救出に向かっていた。エミルはアルバスとロゼアを氷で作った台車に乗せて運んでいたが、その途中で見つけられる。意識を失っていたアルバスとロゼアはミーナの光の回復魔法によって意識を取り戻した。「あれ、ここは…。」目を覚ましたロゼアはゆっくりと目を開ける。「お、気が付いたか!大丈夫か!?」視界に入ってきたライクは心配そうに声を掛け、その声で徐々に意識がハッキリしてきたロゼア。「え…何で…?ライク?」「ああ。俺達は丁度さっき戻ってきた所だ。大丈夫か?」「…心配、してくれてるの?」今まで北の大国では心配される事の無かったロゼア。半分信じられないといった感じでライクに聞いた。「ああ。お前も俺達の代わりに戦ってくれてたんだろ?俺達が不在の中、良くやってくれたぜ。本当に感謝してる!」ライクは笑顔でロゼアに言うと、ロゼアは嬉しさで左目からジワッと涙が溢れてきた。ライクの笑顔を見れて良かったと、安心していたのだ。ネルも同様に、目を覚ましたアルバスに一言声を掛ける。「…僕との約束、ちゃんと守ってくれたね。」「…ごめん。倒す事は出来なかった。」「仕方ない。後はあの男(グレン)に任せよう。」短い会話ではあるものの、ネルは約束を守って戦ってくれたアルバスに感謝した。そして次はカイルの所にも空間移動した。転移した場所でカイルはボロボロの状態で倒れていた。ミーナとニケル。2人の回復魔法を使ってようやく意識を取り戻したカイル。普段タフなカイルであるが、意識を取り戻してもその声はか細く弱々しかった。「…みんな…帰ってたのか?…」「カイル君!エミル、カイル君が目を覚ました!」意識が戻った事を確認したミーナは慌ててエミルを呼んだ。エミルも慌てながらカイルの顔に近づいた。「カイル!」「エミル…良かった…無事だったのか…。」「馬鹿!いつもいつも!自分の事を後回しにして!本当に馬鹿!」ボロボロと涙を流しながらカイルに対して言うエミル。それに対してカイルは一言。「…ごめんな。」そうエミルに言うと、エミルは更に号泣しながらカイルの胸元で泣きじゃくった。「カイル君。連絡してくれてありがとう。今ね、グレンが戦いに行ってるの。」「グレン…そうか。なら、安心だな。」そう言うとカイルは安心した様に目を閉じて眠った
宝石店を出てからミーナはカレンに案内されながら色んな店に寄り、手には買った服や旅に必要な生活必需品などが入った袋を持っている。 重くなった荷物を持っているミーナを見て微笑ましく思ったカレン。 笑いながらミーナに声をかけた。 「うふふ、いっぱい買い物できて良かったね。ミーナちゃん。」 「はい!本当にありがとうございます、カレンさん。」 「いいのよ。仕事の休みは私1人で買い物してるからあなたみたいな女の子と買い物できて楽しかったわ。」 「えへへっ。そういえばカレンさんは何の仕事してるんですか?」 「私?私は……」 「おーい、カレーン!」 カレンが答えようとした時
血だらけの悪魔に対してカイルは1つも攻撃を喰らっていないため、無傷だった。 そして、悪魔はあることを思い出した。 「お…思い出したぞ!お前は、イフリークの守護神だな?」 「……」 カイルは返事を返すことなく、コクっと頷いた。 「まさか、神級魔導師が相手とは。だが、このPDO(プロジェクト・デビル・オペレーター)の俺が負けるなどありえない!」 そしてPDOは地面に手を置くと周りに地割れが起こった。 カイルとミーナはあまりの揺れに体制を崩しそうになった。 「お前の魔法は影だ!その影を無くしてやればお前は何もでき…」 すると悪魔の背後から別の影が発生した。 そ
魔力を貯めていた悪魔の手が突然刃物で斬られたように落ちた。 「なにっ?」 すると今度は周囲にいた悪魔達がバタバタと倒れていき、悪魔の心臓部分には深い切り傷があった。 「まさかっ、俺以外の悪魔がほとんど全滅だと!?」 騎士達はいきなりの悪魔の全滅に戸惑ったがそれが誰の仕業かすぐに分かった。 「これは、もしかして…」 「ああ、間違いない。この魔力は、この魔力は我ら騎士団最年少で最強の方、団長 だ!」 この国の団長は歴代初の10代の団長だが他の国ではこういう噂を聞く。 イフリークの騎士団団長の実力はは数で表すと国の騎士5000人の強さに等しく、 戦場では自分は無傷
南地区 黒いヒビ割れの悪魔が言った通り、この地区にも悪魔がいた。 その中でも黒いスーツを着たスマートな体型の悪魔は騎士団の攻撃を喰らっても倒れることはなく、街を容赦なく破壊していく。 「くそっ!もっと魔砲弾を撃てー!」 「だめです!もう弾が残り少ない!」 「くそっ!こんな時に12騎士長の1から9長は他の国に出張とは…エバルフとカレンはまだ戻ってこないのか!?」 「それが…未だに連絡が取れません!」 「くそっ!仕方がない!俺がやってやる!」 先陣を切って前に出たのはエバルフとカレンと同じ称号を持つ男。 11騎士長(イレブン・ナイツ) サージス・デルモンテ







